椅子から立ち上がると腰が痛いのはなぜ?受診の目安と座り方の見直し

椅子やソファから立ち上がるときに腰が痛む原因は、一つとは限りません。座っている間の姿勢、立ち上がる動作の仕方、腰以外の不調など、人によって考えられることが異なります。

座り方の見直しや、体の状態に合った立ち上がり方を知ることで、腰への負担のかかり方を変えられる場合があります。ただし、突然のしびれや片側の脱力、尿や便の新たな異常、お尻や陰部まわりの感覚の変化、脚や足に新たに力が入りにくくなるといった症状があるときは、見直しを試すより先に、医療機関や救急での確認が必要です。そのような症状がないか、まず、このあとの「先に確認したい:受診を急ぎたい症状」をお読みください。

この記事は一般的な情報をまとめたもので、診断ではありません。痛みの原因の判断は、医療機関で行われます。

スツールに腰かけた人物を横から撮影した写真

椅子から立ち上がるときに腰が痛むのはなぜ?

立ち上がるときの腰の痛みは、一つの原因に決められるものではありません。ここでは、公的な資料で確認できることと、立ち上がる動作そのものから考えられることを分けて整理します。

立ち上がる動作では、腰まわりに力がかかりやすい

椅子から立ち上がるときは、座った姿勢から上半身を前に倒し、腰・お尻・脚で体を持ち上げます。この動きの途中は、腰まわりに力がかかりやすい場面です。痛む場所やタイミングは、人によって異なります。

座っている時間や姿勢も見直しのポイント

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年改訂版)には、立った姿勢でも座った姿勢でも、同じ姿勢を長時間取らないようにすることが示されています。職場向けの指針ですが、自宅で椅子やソファに長く座るときにも参考になる考え方です。座り方と立ち上がるときの痛みとの関係は、人によって異なります。

腰以外に原因がある腰痛もある

日本整形外科学会は、腰痛には、腰(背骨まわり)に原因があるものだけでなく、血管の病気、尿管結石などの泌尿器の病気、婦人科の病気、胆嚢炎や十二指腸潰瘍などの消化器の病気など、腰以外に原因があるものもあると説明しています。安静にしていても痛みが軽くならない場合などは、動作の工夫で対応しようとせず、整形外科などの医療機関で原因を確認することが大切です。

先に確認したい:受診を急ぎたい症状

座り方を見直したり、立ち上がり方を相談したりする前に、次の症状がないかを確認してください。緊急度は症状によって大きく異なるため、3つに分けて示します。同じ「尿漏れ」や「足の力が入らない」でも、新たに出たのか、急に悪化しているのか、以前から続いているのかによって、急ぐ度合いが変わります。ただし、以前から続いている症状でも、原因をまだ医療機関で調べていない場合は、変化がなくても速やかな確認が必要です。ここに挙げたのはすべてではありません。当てはまらなくても不安なときや、いつもと違うと感じるときは、医療機関に相談してください。

  • 119番:突然の片側の脱力やしびれ、意識の異常、胸や背中の突然の激痛、強い衝撃を受けたあとなど
  • 直ちに救急で診てもらう:腰痛に加えて、新たな尿や便の異常、お尻や陰部まわりの感覚の変化、脚や足に新たに力が入りにくくなった場合
  • 通常の外来で早めに確認する:安静でも軽くならない痛み、しだいに悪化する痛み、発熱、以前から続くしびれや尿漏れで原因をまだ調べていない場合など

救急車(119番)を呼ぶ症状

消防庁の資料「救急車を上手に使いましょう」は、次のような症状を、ためらわず救急車を呼ぶ目安として挙げています。腰の痛みの有無にかかわらず、当てはまる場合は119番に連絡してください。

  • 突然、片方の腕や足に力が入らなくなった
  • 突然のしびれが出た
  • 胸や背中に突然の激痛がある
  • 顔の半分が動きにくい、またはしびれる。ろれつがまわりにくい
  • 交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた
  • 意識がない、または様子がおかしい(もうろうとしている)

これらに当てはまる場合は、相談窓口に先に電話をかけず、ためらわず119番に連絡してください。千葉県も、明らかに緊急の場合は、迷わず119番で救急車を呼ぶことが大切としています。

直ちに救急で診てもらう症状(腰痛に加えて新たに出た場合)

腰痛に加えて、次のような症状が新たに出た場合は、「馬尾症候群」など、背骨の中の神経が圧迫される重大な状態の可能性があります。馬尾症候群は、脊髄の底部から伸びる神経の束が圧迫されたり損傷したりして起こる状態で、MSDマニュアル家庭版は「緊急の医学的処置が必要」としています。英国の病院(North Bristol NHS Trust)の患者向けの説明も、新しく出た同様の症状について、緊急に医療の助言を求めるよう案内しています。

  • 新たに、尿が出ない・出し始められない、または尿や便の感覚がなくなる・自分でコントロールできず漏れてしまう
  • 新たに、お尻・内もも・股・陰部(会陰部)まわりの感覚が鈍い、しびれる、またはいつもと違う
  • 脚や足に、新たに力が入りにくくなった

脚や足に新たに力が入りにくくなった場合は、症状が進んでいなくても、緊急の医学的な評価が必要になる可能性があります。進んでいる場合は、特に急いでください。なお、突然、片方の腕や足に力が入らなくなった場合は、この区分ではなく、前の「救急車(119番)を呼ぶ症状」にあたります。

当てはまる場合は、翌日以降の予約や自宅での様子見をせず、救急外来を受け付けている医療機関で直ちに診てもらってください。夜間や休日でも同じです。この場合は、#7119などの相談窓口に先に電話をかけず、医療機関を受診してください。自力での移動が難しいとき、症状が急に進んでいるときは、119番に連絡してください。

通常の外来でできるだけ早く確認したい症状

日本整形外科学会は、次のような症状を伴う腰痛について、「放置したり自分で管理することは禁物で、すみやかに整形外科を受診」するよう勧めています。ただし、前の「直ちに救急で診てもらう症状」のように新たに出た場合は、通常の外来を待たず、そちらを優先してください。

  • 安静にしていても痛みが軽くならない
  • 痛みがしだいに悪化していく
  • 発熱している
  • 足がしびれる、または力が入りにくい(新たに出た場合は、前の「直ちに救急で診てもらう症状」を優先)
  • 尿漏れがある(新たに出た場合は、前の「直ちに救急で診てもらう症状」を優先)

以前から続いているしびれ、尿漏れ、足の力の入りにくさがあり、症状が変わっていない場合も、変化がないという理由だけで急がなくてよいとは判断できません。原因をまだ医療機関で調べていない場合は、速やかに整形外科などで確認してください。すでに原因を調べて経過を見ている場合は、その医師の指示に従ってください。症状が強くなった、いつもと違う、新たな症状が加わったと感じたときは、早めに相談し、前の「直ちに救急で診てもらう症状」に当てはまらないかも確認してください。

腰の痛みに加えて、お尻や脚の痛みが強くなってきている場合は、様子を見続けないでください。日本整形外科学会は、痛みがしだいに悪化する腰痛について、すみやかな整形外科の受診を勧めています。North Bristol NHS Trustの患者向けの説明も、腰痛に加えてお尻や脚の痛みが悪化している場合を、緊急に医療の助言を求める症状の例に挙げています。

  • 脚や足に新たに力が入りにくい、お尻や陰部まわりの感覚が変わった、尿や便に新たな異常がある場合:痛みの程度にかかわらず、前の「直ちに救急で診てもらう症状」に従ってください。
  • 上のような症状がない場合:できるだけ早く、整形外科などの医療機関で確認してください。

このほか、次のような場合も、整形外科で確認してください。

  • 足の指先の感覚が鈍い、または麻痺しているような感じがある(尿や便の異常、お尻や陰部まわりの感覚の変化を伴う場合は、前の「直ちに救急で診てもらう症状」を優先)
  • 転んだり尻もちをついたりしたあと、または軽いはずみのあとから、強い腰や背中の痛みが続いている

日本整形外科学会は、骨粗鬆症などで骨がもろくなっていると、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなり、背骨(脊椎)の圧迫骨折も起こりうると説明しています。健康長寿ネットも、ふとした拍子に強い背中の痛みが出て続く場合は、圧迫骨折の可能性があるとしています。

座り方の見直しや動作の途中で症状が出たとき

座り方を見直しているときや、立ち上がるなどの動作の途中で、痛みが強くなる、足や足の指先にしびれが出る、またはしびれが広がる、足に力が入りにくくなるといったことがあれば、その動きを無理に続けず、医療機関に相談してください。脚や足に新たに力が入りにくくなった場合や、尿や便の新たな異常などがある場合は、前の「直ちに救急で診てもらう症状」に従ってください。

どれに当たるか判断に迷うとき

上のどれに当たるか判断に迷うときは、千葉県の救急安心電話相談(#7119)が利用できます。受診するか救急車を呼ぶか迷ったときに、看護師が相談に応じる窓口です。電話でのアドバイスであり、診断や治療を行うものではありません。ダイヤル回線やIP電話からの番号、受付時間などは、千葉県の案内ページで確認してください。

なお、「救急車(119番)を呼ぶ症状」や「直ちに救急で診てもらう症状」に当てはまる場合や、当てはまる疑いがある場合は、この窓口を先に使わず、119番や救急外来を優先してください。

立ち上がり方や手の支え方は、体の状態によって変わります

立ち上がるときに腰が痛む場合、腰に負担をかけにくい動き方は、その方の体の状態によって異なります。そのため、この記事では、すべての方に当てはまる決まった立ち上がり方は紹介していません。

当院では、立ち上がる際の体の使い方、手の支え方、座る姿勢などは、その方の体の状態によって変わるため、一人ひとりに合った指導をお伝えしています。

受診を急ぐ症状については、前の「先に確認したい:受診を急ぎたい症状」で説明しています。当院に相談する場合の流れは、このあとの「痛みが続くとき・当院に相談する場合」をご覧ください。

立ち上がりを楽にするための座り方の見直し

座り方と立ち上がりやすさとの関係は人によって異なりますが、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年改訂版)には、椅子に座るときの姿勢について、次のような考え方が示されています。職場向けの指針であり、自宅の椅子やソファにそのまま当てはまるとは限りませんが、見直しの参考になります。

  • 椅子に深く腰を掛け、背もたれで体を支え、足の裏全体が床につく姿勢を基本とする
  • 椅子の座面の高さは、足の裏全体が床につく高さにする
  • 座面の高さや奥行き、背もたれ、肘掛けの高さが、体格に合った椅子を使う
  • 同じ姿勢を長時間続けず、長く座るときは、適宜、立ち上がって腰を伸ばすなど姿勢を変える

日本整形外科学会も、腰痛の悪循環を断ち切るために、中腰にならないなど日常的な姿勢に注意し、腰の支持性を高めるための運動や体操を続けるとよいとしています。ただし、個々の状態に応じた体操や運動については、整形外科で相談するよう勧めています。この記事では、特定の体操は紹介していません。

痛みが続くとき・当院に相談する場合

座り方を見直しても痛みが続く、何度も繰り返す、日常生活で困っているという場合は、まず「先に確認したい:受診を急ぎたい症状」に当てはまらないかを確認してください。そのうえで、相談先を考えます。

医療機関での確認を優先する場合

当院では、次のいずれかがある場合は、施術よりも先に、整形外科などの医療機関での確認を優先する方針です。

  • 足に力が入らない
  • 尿意・便意や、排尿・排便を自分でコントロールできない
  • 足の指先に感覚の麻痺がある

緊急度は症状によって異なります。新たに出た場合など、119番や救急での評価が必要な状態については、前の「先に確認したい:受診を急ぎたい症状」に従ってください。また、骨折や靭帯の損傷の可能性がある場合は、先に病院で検査を受けていただくことがあります。交通事故のあとの腰痛は、まず医療機関の受診をご案内しています。

当院にご相談いただく場合

当院には、椅子やソファから立ち上がるときに腰が痛いというご相談をいただくことがあります。受診を急ぐ症状に当てはまらない場合は、ご相談ください。

初回は、予診表にご記入いただき、その内容をもとにお話を伺ったうえで、施術前の検査を行います。施術のあとは、施術前の検査と比べて一緒に確認し、日常生活での注意点をお伝えします。通院の頻度や回数は、一律にはご案内せず、状態を見てご提案しています。詳しい流れは施術の流れをご覧ください。

施術による改善が難しいと判断した場合は、その旨をご説明し、施術を行わないことがあります。腰痛についての案内は腰痛の施術案内に、料金は料金案内に、野田市にある当院へのアクセスはアクセスに、ご予約の方法はご予約のページにまとめています。

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この記事を書いた人:上床 一進(院長)

参考にした資料

各資料の内容は、2026年10月12日に確認しました。

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